はてなブックマーク - 学問がすべて : 日本文化の本場から見る「文化の盗用」問題

 なぜ5月の記事が9月になって話題になるのやら。

文化の盗用という概念を認めるなら、海外で奇妙な日本食を出しているレストランに文句をつける”日本食警察”も許されるはずですが、それでいいんですね?

kurokawada 2017/09/16 10:13

 「海外で奇妙な日本食を出しているレストランに文句をつける”日本食警察”」というのは、2006年に農林水産省が提案した海外日本料理店の認証制度のことである。
 なお、この制度を創設するための有識者会議では、モデルとしてタイとイタリアのレストラン認証制度が挙げられていた[1] [2] [3]。現在、タイ料理店についてはタイ国政府商務省国際貿易振興局(DITP)が[4]、イタリア料理店については、日本では在日イタリア商工会議所が認証をおこなっている[5]

「日本文化の本場」だからこそこの件に口を挟む資格はない。アメリカの日系人から何が収奪されようと損しない立場ならいくらでも「寛容」になれるだろうさ

IkaMaru 2017/09/16 12:32

 先ほど挙げたタイ料理店の認証(タイ・セレクトおよびタイ・セレクト・プレミアム)は、日本だけでなく、世界中でおこなわれている[6]。もちろんアメリカでもだ。そして、先述の通り、主催はタイ政府だ。
 それでは、なぜ、アメリカのタイ系人から何が収奪されようと損しない「タイ文化の本場」(それも政府!)が、現地のタイ系人を差し置いてアメリカのタイ料理のあり方に口を挟む資格があるのか? 言うまでもない。「タイ文化はアメリカのマイノリティーのものである前に、タイのマジョリティーのものである」という認識がアメリカで広く受け入れられているからに決まっている。

 また、世界には、日本の国際交流基金やドイツのゲーテ・インスティトゥート、韓国の世宗学堂など、海外で自国の言語や文化を教える本国政府肝煎りの機関があるが、これらの機関はアメリカでも活動している。
 それでは、なぜ、アメリカの日系人から何が収奪されようと損しない「日本文化の本場」(それも政府!)が、現地の日系人を差し置いてアメリカで日本語を教える資格があるのか? 言うまでもない。「日本語や日本文化はアメリカのマイノリティーのものである前に、日本のマジョリティーのものである」という認識がアメリカで広く受け入れられているからに決まっている。

 さらに、5月29日の記事にも書いたように(どうせ読んでいないだろうが)、日本の漫画やアニメにはつり目キャラクターが当たり前に登場し、そしてそれらの作品はキャラクターデザインの修正なしで輸出されている。
 アメリカでは、つり目は「醜い東洋人」の記号とされている。また、アメリカには「日本の漫画やアニメのキャラクターは白人をモデルにしている」という迷信が存在する[7]。そんな国の人間に日本人という設定のつり目キャラを見せたらどうなるか? 「このキャラクターのデザインは東洋人のステレオタイプをことさらに誇張している」という感想を持たれるであろうことは想像に難くない。
 だが、実際は、日本の漫画やアニメは、東洋人差別のレッテルを貼られることなく、当たり前にアメリカで受け入れられている。これはどういうことか? おそらくは、「日本の作品である以上、日本人はこの描写を問題視していないはず。ならば、つり目キャラであっても東洋人差別と考える理由はない」という判断であろう。つまり、アジア系アメリカ人の意向よりも、日本のマジョリティーの意向を重視していることになる。

 このように、アメリカのローカルルールでは、民族文化の取り扱いや人種・民族の描き方については、必ずしも、本場のマジョリティーの意向よりアメリカのマイノリティーの意向が優先されることにはなっていないのだ。むしろ、本場のマジョリティーの意向が優先されることも少なくない。かわいそうランキングや判官贔屓の論理は採用されていないのである。だからこそ、5月29日の記事にも書いた通り(どうせ読んでいないだろうが)、「アメリカの基準でもOKのはず」なのである。

 なお、タイセレクトの認証はオーストラリアでもおこなわれている。国際交流基金はオーストラリアでも日本語を教えている。日本のアニメはつり目の修正なしにオーストラリアへ輸出されている。民族文化の取り扱いや人種・民族の描き方の基準は、オーストラリアもアメリカ同様、本場の意向優先となっているようだ。


 さて、オタゴ大学講師のRosemary Overell氏は、ミランダ・カー氏の件について、豪カンバセーションにて次のように述べている。

While Kerr’s appearance in Japanese clothing is problematic, it is also more complicated than the standard cultural appropriation as contemporary colonialism model. It is also important to consider the audience for Vogue Japan. It is a primarily Japanese audience.
(カーの和装に問題があるとしても、それは現代の植民地支配のモデルとしての標準的な文化の盗用より複雑なものである。「Vogue Japan」の読者層について考えることも大切である。それは第1に日本人なのだ。)

Miranda Kerr goes geisha in Vogue … and that might be OK

 つまり、Overell氏は、カー氏が「Vogue Japan」で「盗用」しているのは、日本のマジョリティーの文化だと言っているのだ。なお、カンバセーションの記事では、一貫して"Japan", "Japanese"という語が用いられていて、"Japanese-Australian"や"Japanese-American"という言葉は出てこない。また、コメント欄を含め、日系オーストラリア人や日系アメリカ人については一切言及されていない。

 Overell氏はまた、次のようにも述べている。

The politics of her “dressing up” might be different had she been on the cover of Vogue or Elle US in non-Western garb (just as Pharrell has been).
(もし彼女が「Vogue」や「Elle」のアメリカ版の表紙で西洋以外の衣装を着た場合、彼女の「ドレスアップ」の政治的意味は別物であっただろう(ファレルの件のように)。

Miranda Kerr goes geisha in Vogue … and that might be OK

 自分たちと関わりのない場所で白人モデルに芸者姿を披露されたら、さしもの日本人も怒るだろうと言わんばかりの書きぶりだ。だが、実際はそうならなかったということは、ご存知の通りである。

 また、カーリー・クロス氏の件に関する「The Cut」「ロサンゼルスタイムズ」の記事でも、"Japanese-American"や"Asian-American"といった言葉は一切用いられていない。また、「ロサンゼルスタイムズ」の記事はツイッターでの批判を引用しているが、そのツイートで使われている語は"Asian"や"East Asian"だ。少なくとも、"Japanese-Japanese"や"Asian-Asian"を除外している様子はない。
 結局、この件について「Vogue」やクロス氏を批判していた連中は、アメリカのマイノリティーであろうと日本のマジョリティーであろうと、あるいはそれ以外の国の人間であろうと区別せず、「アジア人」として十把一からげに扱っていたのである。日系アメリカ人云々というのは、後づけの理由にすぎないのである。

 雑な括りで野蛮人扱いされているからには、なめるなよと言ってやらねばならない。

私は白人女性が楽しみで着物を着ることへの批判は支持しない。しかしこれは日系人の立場を無視した本国人の傲慢な主張。全面衰退中の日本が世界におけるマイノリティの苦悩が身近になるのは時間の問題なのにね。

usi4444 2017/09/16 11:23

 全面衰退中なのは日本だけではない。イギリスやフランス、イタリアなどの西ヨーロッパの主要国も、すでに絶頂期を過ぎ、低成長~衰退期に入っている[8] [9]。また、スペインやギリシャの経済危機なども記憶に新しい。代わって現在経済発展著しいのは、ご存知中国だ。言うまでもなく、中国はアジアの国であり、そこでは白人はマイノリティーである。

 さて、日本では、ヨーロッパ文化の盗用どころか、魔改造すら大っぴらにおこなわれている。もちろんヨーロッパ系日本人に断りなくだ。また、イギリス人を嘘つきの代名詞にしたり、イタリア人を「とにかく明るいマザコン野郎」扱いしたり、モルドバ人をギャグキャラにしたり、フランス人の悪口を言ったりしても、反差別を唱える「進歩的」「良識的」な人々――いわゆるSJWに非難され、表現を引っこめなければならなくなることはない[10] [11] [12]
 それはなぜか。
 何度も言っている通り、日本のSJWどもが西洋諸国を十把一からげに大国と見なし、西洋の白人はいつでもどこでもマジョリティーだと考えているからだ。西洋文化を取り入れることは進歩であって、決して収奪や搾取ではありえないと考えているからだ。相手はマジョリティーなので、悪口は抵抗でこそあれ、差別にはなり得ないと考えているからだ。
 もちろんそれは正しい考えではない。
 かつて、西洋世界だけが先進地域であった時代には、近代化は西洋化と同義語であった。文明と西洋文化は同義語であった。ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開化の音がした。
 だが、今はそうではない。非西洋世界の発展により、西洋世界の影響力は相対的に弱まった。西洋はもはや唯一の文明世界ではなく、数ある文化圏の1つとなった。西洋と非西洋は、互いに影響を及ぼし合う関係になったのだ。今となっては、西洋人が非西洋文化を取り入れることと、非西洋人が西洋文化を取り入れることを区別する理由はなくなったのだ。
 また、言うまでもなく、ヨーロッパ人の戯画化と、例えば中国人の戯画化との間に区別を設ける理由もない。どちらもOKか、どちらもNGか。2つに1つだ。


 そもそも、日本人にとって「世界におけるマイノリティの苦悩が身近」でなかったのはいつのことなのだろうか? 戦時中だろうか?
 言うまでもないが、日本以外のすべての国では、日本民族は圧倒的マイノリティーである。これは、バブル期であろうと高度経済成長期であろうと変わらない。

白人が着物を着る事で、アメリカの日系人が何を収奪されると言うのだ。立場がどう変わると言うのだ。欧米盲信の思考停止も甚だしい。傲慢なのはお前らだ。

zions 2017/09/17 23:58

 欧は関係ないだろ……と言いたいが、前述の通り、SJW連中には、アメリカもオーストラリアもヨーロッパも区別せず、西洋世界を十把一からげにマジョリティー扱いしている節がある。アメリカのSJWの東洋観も、日本のSJWの西洋観も、その雑さはいい勝負なのだ。

日本発文化だと言うこととと、それとは切り離された和服という形式という距離感もあるのでは。今、ステロタイプなゲイをコントでいじくったらそれは怒られるだろうし、どこにも日本の総意として出てきてないのでは。

quick_past 2017/09/16 12:49

 日本と和服が別々の存在と考えられているのならば、そもそも騒ぎになることはない。ゲイのたとえを使うならば、原曲がゲイを題材にした歌だからといって、テレビで「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」を流すことが問題にならないようなものだ。
 実際の所、「日本文化の盗用」が問題になったケースでは、日本と和服は切り離されたものとは考えられていないようだ。例えば、カー氏のケースは日本文化に敬意を表してのものであることが明言されているし[13]、また、クロス氏のケースでも日本を思い切り意識していることは明白だ[14]

 また、「日本の総意」を出すことなどそもそも不可能である。できるのは全般的な傾向を知ることだけだ。
 現代日本では、日本文化好きの外国人を扱ったテレビ番組が高い人気を博している。官民挙げて日本文化を「クールジャパン」と称してその輸出に励んでいる。ここから、日本では、外国人が日本文化を利用することは、むしろ好意的に受け止められる傾向にあることがうかがえる。


[1] 海外日本食レストラン認証有識者会議の設置について
[2] 第1回海外日本食レストラン認証有識者会議 議事録
[3] 海外におけるレストラン認証制度について
[4] タイ・セレクト|タイ・セレクトって?
[5] MOI認定について
[6] Thai Select certification to identify Thai restaurants with 60% of authentic Thai foods
[7] 漫画のキャラは白人ではない
[8] 一人当たりの購買力平価GDP(USドル)の推移(1980~2017年)(日本, アメリカ, 中国, ドイツ, フランス, イギリス)
[9] 主要国のGDPをグラフ化してみる(2017年)(最新)
[10] 人種差別はなぜ許されるのか?
[11] 西洋かぶれと人種差別
[12] 「ぽりちかる・これくとねす」という欺瞞
[13] MIRANDA OBSESSION
[14] Karlie Kloss Appears As a Geisha in Vogue’s Diversity Issue