「今の若い子って何にお金使ってるの?」というおじいちゃんの問いに、若者が出す答えがこちら



 ほんまそれではない。

 「おじいちゃん」の話題なのに、なぜ10年前の話が出てくるのだ。犬じゃあるまいし、10年で若者がおじいちゃんになったりはしない。おじいちゃんと若者の話をするのなら、おじいちゃんが若者だったころ、つまり、四五十年以上前のケースを出さなければならない。
 下のグラフは、1世帯当たりの可処分所得を消費者物価指数で割った値の推移を示している。これにより、実質的な可処分所得の増減を知ることができる。

可処分所得/消費者物価指数
 可処分所得:「1世帯当たり年平均1か月間の収入と支出-二人以上の世帯うち勤労者世帯 (1963年~2016年)(全国)」より[1]
 消費者物価指数:持家の帰属家賃を除く総合(平成27年平均=100)[2]

 今から40年前、1977年の1世帯当たり1か月間の平均可処分所得は256340円、消費者物価指数は65だった。つまり、可処分所得/消費者物価指数の値は約3900となる。2016年の可処分所得/消費者物価指数の値は約4300だから、今65歳の人が25歳の頃の手取り額は、感覚にして今の約92パーセントだったことになる。
 45年前の1972年、今70歳の人が25歳の頃の値は約3600。今の約83パーセント。
 50年前の1967年、今75歳の人が25歳の頃の値は約2700。今の約63パーセント。

 ここからわかるように、おじいちゃんが若い頃は、今よりずっと余裕のない生活を送っていたのだ。

 さて、社会保険制度の整備や課税最低額の引き下げにより、庶民が所得税や社会保険料を支払うようになったのは昭和10年代。1936年の増税前は、富裕層を除き、収入はほとんどすべてが自分の懐に入った。だが、その頃の人々――生きていたら現在年齢3桁の人々――が今より余裕のある生活を送っていたかといえば、そのようなことはない。現在の物価は当時の約2000倍、平均収入は約5000倍[3]。現在、収入に占める可処分所得の割合は約8割だから、税金や保険料を考慮しても、現在の人々は昭和初期の人々の約2倍余裕のある生活を送っていることになるのだ。




 おじいちゃんの若い頃は、今よりずっと給料が安くて余裕が出なかった。使えるほどもらっていなかった。

 年寄りに対して貧乏アピールすることはナンセンスである。年寄りは、今より貧しい時代を生き抜いてきたのだ。そんな人々に貧乏を訴えたところで、「最近の若者は情けない」と呆れられるのが落ちである。


[1] 家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)
[2] 昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?
[3] 「「月給100円サラリーマン」の時代」 岩瀬彰 ちくま文庫