2015年は戦後70年の年である。

 第二次世界大戦を「この間の戦争」「先の戦争」などと呼ぶこと、存命の戦争体験者の話を聞く機会も多いこと、学校教育での戦後史の扱いが軽いことなどから、1945年は近い過去のように感じられる。だが、70年というのは決して短い時間ではない。70年前の70年前、つまり2015年の140年前は1875年。明治8年。樺太千島交換条約締結や江華島事件の年、廃刀令の前年、佐賀の乱の翌年だ。ちょんまげの封建国家が列強の一員になるという大変化に要する時間、それが70年なのだ。ひとくくりにできるようなものではない。

 さて、2015年から見た1945年は、1945年から見た1875年と同じ遠さである。それでは、1945年から見た明治~昭和の歴史的事件は、感覚的にどれくらい昔のことだったのだろうか。現時点から見た戦後と対比して考えてみたい。

 1945年時点から見て、真珠湾攻撃は4年前(1941年)の12月。今から4年前の2011年には、東日本大震災(3月)や野田内閣発足(9月)などの出来事があった。
 世界恐慌のきっかけとなった「暗黒の木曜日」は16年前(1929年)。対応する今から16年前の1999年は、コソヴォ紛争が激化し、NATO軍によるユーゴスラヴィア空爆がおこなわれた年だ。
 普通選挙法の公布は20年前(1925年)。対応する1995年の出来事としては、阪神大震災地下鉄サリン事件青島幸男の都知事就任などがある。
 関東大震災は22年前(1923年)。対応する1993年には、北海道南西沖地震が起きている。
 第一次世界大戦の勃発は31年前(1914年)。対応する1984年には、新札が発行され、一万円札の肖像画が聖徳太子から福沢諭吉に代わっている。
 日露戦争の開始は41年前(1904年)。対応する1974年には、佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞している。
 日清戦争の開始は51年前(1894年)。対応する1964年には、トンキン湾事件東海道新幹線開通、東京オリンピック開催などの出来事があった。
 大日本帝国憲法施行は55年前(1890年)。対応する1960年は、新安保条約発行の年であり、また、アフリカで17か国が独立を達成した「アフリカの年」でもある。
 西南戦争は68年前(1877年)。対応する1947年は、日本国憲法施行の年だ。

 文化・娯楽に関する出来事にも注目してみたい。

 「ハワイ・マレー沖海戦」の公開は3年前(1942年)。対応する2012年に公開された映画としては、「テルマエ・ロマエ」などが挙げられる。
 江戸川乱歩の「怪人二十面相」の初出は9年前(1936年)。対応する2006年は、柳内たくみの「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」のウェブ版(原題は「自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」。とどく=たくさん名義)の投稿が始まった年である。
 「キングコング」の公開は12年前(1933年)。対応する2003年には、「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」が公開されている。
 田河水泡の「のらくろ」シリーズの開始は14年前(1931年)。対応する2001年は、荒川弘の「鋼の錬金術師」連載開始の年である。
 あんみつの誕生は15年前(1930年)。対応する2000年は、サントリーのDAKARAの発売が始まった年である。
 日本でのラジオ放送開始は20年前(1925年)。対応する1995年は、ウィンドウズ95プリクラが誕生した年であり、また、セガサターンプレイステーション発売開始の翌年でもある。
 夏目漱石の「それから」の初出は36年前(1909年)。対応する1979年は、ハヤカワ文庫からハインラインの「夏への扉」の邦訳版が出版された年であり、また、「機動戦士ガンダム」「ドラえもん」(テレビ朝日版)「バトルフィーバーJ」などテレビ番組の放送開始の年でもある。
 「鉄道唱歌」の発表は45年前(1900年)。対応する1970年には、ジローズの「戦争を知らない子供たち」が発表されている。
 鹿鳴館の完成は62年前(1883年)。対応する1953年は、日本でのテレビ放送開始の年だ。なお、東京タワーの完成は、テレビ放送開始の5年後、1958年のことである。

 こうやって数字にしてみると、「戦前」(明治~第二次世界大戦)が戦後と比べていかに変化の大きい時代であったかがわかる。日本国憲法の歴史は大日本帝国憲法のそれよりも長いのだ。また、ラジオ放送開始から玉音放送までの期間というのは、プレイステーション発売開始から現在までより短いのだ。