最近のライトノベルのタイトルはやたら長くなっているという。読者がそう言っているというだけではない。書店員のブログ日本経済新聞のことばオンラインでも、あたかも当たり前の事実のように述べられている。
 では、最近のライトノベルのタイトルは、昔と比べて本当に長くなっているのだろうか。長くなっているとしたら、一体どれくらい長くなっているのだろうか。実際に調べてみた。

 なお、ここで「昔」というのは2007年以前、「最近」というのは2009年以降のことを指す。
 ことばオンラインの記事にもあるように、ライトノベルのタイトルの長大化のきっかけは2008年刊行の「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」(伏見つかさ 電撃文庫)のヒットというのが定説となっている。それが正しいならば、2008年をタイトル長大化の過渡期と見なし、それより前を昔、後を最近と分類するのは妥当だろう。
サンプルとしては、2002年9月と2014年11月の電撃文庫の新刊を用いた。また、タイトルの文字数を数える際は、副題や巻数表示、記号などは無視した。例えば「悪魔のミカタ⑤ グレイテストオリオン」ならば、「悪魔のミカタ」と見なし、6文字と数えた。なお、以下の一覧表では、文字数に含めた箇所を下線で示した。


 昔のライトノベル(2002年9月に刊行された電撃文庫8冊)[1]
  • イリヤの空UFOの夏 その3 (10文字)
  • 悪魔のミカタ⑤ グレイテストオリオン (6文字)
  • リバーズエンド3 free the birds (7文字)
  • ドラゴンパーティ⑤ 戦火に謡え戦星 (8文字)
  • 大唐風雲記③ The Last Emperor of 漢 (5文字)
  • 頭蓋骨のホーリーグレイルII (12文字)
  • 灰色のアイリスII (7文字)
  • 新装版フォーチュンクエスト⑦⑧バイト編 (10文字)
 平均値:約8.1
 中央値:7.5
 最頻値:7, 10


 最近のライトノベル(2014年11月に刊行された電撃文庫14冊)[2]
  • GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン ガールズトーク 狼と魂 (10文字)
  • ゼロから始める魔法の書II ―アクディオスの聖女〈上〉― (11文字)
  • ブギーポップチェンジリング 溶暗のデカダント・ブラック (13文字)
  • 城姫クエスト 僕が城主になったわけ (6文字)
  • 虹色エイリアン (7文字)
  • クズが聖剣拾った結果2 (10文字)
  • エスケヱプスピヰド 七 (9文字)
  • 明日ボクは死ぬキミは生き返る。 ~Sunrise & Sunset Story~ (14文字)
  • 王手桂香取り!3 (6文字)
  • 僕らは魔法少女の中2 ―in a magic girl’s garden― (9文字)
  • TRPGしたいだけなのにっ異端審問ハ ソレヲ許サズ〈上〉 純血のダークエルフ (24文字)
  • ニートの恩返し (7文字)
  • サディスティックムーン (11文字)
  • 十三矛盾の魔技使い (9文字)
 平均値:約10.4
 中央値:9.5
 最頻値:9

 確かに文字数は増えている。だが、その増加量は中央値にして2文字。わずかなものだ。決して、昔に比べてやたらタイトルが長くなっているなどということはないのだ。

 これだけでは偶然かもしれないので、その他いくつかの月についても簡単に見てみよう。サンプルとしたレーベルは手元に資料のあった電撃文庫とガガガ文庫の2つである。また、サンプルとした月は、手元に資料のあったものから適当に抽出した。


 昔のライトノベル
  • 2002年8月に刊行された電撃文庫6冊[1] [3]:4~11文字、平均値9、中央値10、最頻値11
  • 2005年5月に刊行された電撃文庫12冊[4]:4~13文字、平均値約8.2、中央値7.5、最頻値7
  • 2007年7月に刊行されたガガガ文庫5冊[5]:4~8文字、平均値5、中央値4、最頻値4
  • 2007年8月に刊行されたガガガ文庫5冊[5]:4~12文字、平均値8.8、中央値10、最頻値10
  • 2007年9月に刊行されたガガガ文庫5冊[5]:4~8文字、平均値6、中央値5、最頻値5, 8


 最近のライトノベル
  • 2013年4月に刊行された電撃文庫16冊[6]:7~21文字、平均値約10.3、中央値9.5、最頻値7, 9, 11
  • 2013年10月に刊行された電撃文庫18冊[7]:4~19文字、平均値約10.2、中央値9.5、最頻値8
  • 2012年1月に刊行されたガガガ文庫7冊[8]:2~13文字、平均値約8.4、中央値9、最頻値9
  • 2014年8月に刊行されたガガガ文庫6冊[9]:8~14文字、平均値10、中央値10、最頻値10
  • 2014年11月に刊行されたガガガ文庫5冊[10]:7~19文字、平均値11.6、中央値12、最頻値7


 確かに全体的に文字数は増えている。しかしやたらと長大化しているとは言いがたい。
 電撃文庫の場合、昔の作品と最近の作品との間に、タイトルの文字数の著しい増加は見られない。
 ガガガ文庫の場合、2007年7月刊行作品、9月刊行作品のタイトルは短いものが多い。これらと比べると、最近の作品のタイトルは明らかに長大化しているように見える。しかし、狭間の2007年8月の値は、最近のものと大差のない数字である。

 確かに、最近はやたら長い文章のようなタイトルのライトノベルが毎月のように刊行されている。しかしながら、それらは少数派だ。全体的には、昔より2~3文字増えた程度なのだ。つまり、最近のライトノベルにはタイトルが長いものがあるが、そうでないものも多いということになる。つまらない結論だ。
 そして、それはすなわち、「昔のライトノベルのタイトルは短かったが、2008年の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のヒット以降、長大なものが主流になった」という定説は迷信だったということでもある。


[1] 「電撃の缶詰」2002年8月号
[2] 電撃文庫 2014年11月の新刊
[3] 「新フォーチュン・クエスト リプレイ はためいわくな夢」はTRPGリプレイなので除外。
[4] 「電撃の缶詰」2005年4月号
[5] 「ガ報」第0004号
[6] 「電撃の缶詰」2013年4月号
[7] 「電撃の缶詰」2013年10月号
[8] 「ガ報」 No. 57
[9] 「ガ報」 No. 86
[10] 小学館::ガガガ文庫:既刊案内