冨樫純一・浅野総一郎「自称詞「ぼく」と女性キャラクター ―いわゆる「ボクっ娘」の役割語的分析」には、以下のような一節が存在する。

自称詞が女性語、文末表現が男性語というパターンである。

(17) わたし/わたくし~ だぜ。

しかし、このような言葉づかいを使用するキャラクターはなかなか思いつかない。

 一方、「おわりに」には以下のようにも書かれている。

本発表に対する反例がいくつかある。例えば、ゲーム『東方project』の登場人物、霧雨魔理沙は「わたし~だぜ」という言葉づかいをする。また、いわゆる不良少女キャラの「あたい~だぜ」といった言葉づかいも反例となり得る。

 とはいえ、「いくつか」という表現から見るに、冨樫・浅野両氏は、「わたし~だぜ」という言葉づかいをするキャラクターは、あくまでごく少数の例外的存在と考えているのだろう。

 だが、実際はそうとも限らない。

 2014年5月30日現在、ニコニコ大百科の「だぜっ娘」の項目には、26のキャラクターの名が挙がっている。
 僕っ娘[1]と比べればはるかにマイナーなのは確かだし、また、ニコニコ大百科でも「妙な男口調」と書かれているように[2]、広く認められている属性とは呼び難い。だが、それでも26人という数字は例外として無視できるほど小さいものではないだろう。

 なお、上の論が発表されたのは2012年9月1日に開催された学会でのこと。一方、ニコニコ大百科に「だぜっ娘」の項目ができたのは2009年4月2日だ。つまり、「だぜっ娘」というのは、確立から2年以上にわたって研究者に注目されることなくひっそりと生き続けてきた概念ということになる。

 また、ニコニコ大百科の掲示板には以下のような書きこみがあった。

76 : ななしのよっしん :2013/05/21(火) 17:49:09 ID: Kl3fUBvynp
>>73
基本的にだぜっ娘は一人称がわたし。俺っていうやつは(例外はあるだろうけど)ほとんどいない
一人称僕は結構いるから、ボクっ娘の方が近いけど、ボクっ娘はだぜ口調じゃない方が多いから別枠扱いなんだぜ

 この発言がどこまで正しいかはわからないが、興味深い指摘ではある。なお、私の記憶が確かならば、ニコニコ大百科に挙げられている26人のうち、少なくとも8人の自称は「わたし/あたし」である。


[1] ボクっ娘の一覧(五十音順)。多すぎて数える気にならない。
[2] 霧雨魔理沙とは