学問がすべて

つまらないは正義

横書き漫画 その3


 今日は、トゥギャッターのコメント欄を見てみたい。

左綴じ(という前提)で原稿を描くデメリットがよくわからないのだが、具体的にはどういうことなんだ?

hijirhy 2013-04-27 18:36:13

 このコメントに対していくつかの返信が寄せられているが、的外れなものも少なくない。続きを読む

横書き漫画 その2


 2月4日の記事のために横書き漫画について調べていたら、興味深い記事を見つけた。

 流行ってますよ!?『漫画横書き議論』??

 上の記事の内容を要約すると以下のようになる。

 縦書きの漫画は左向きのキャラクターが多い。また、右利きの人は右向きの顔より左向きの顔の方が描きやすい。したがって、右利きの人にとっては横書き漫画より縦書き漫画の方が描きやすい。

 本当だろうか? 横書き漫画と縦書き漫画でキャラクターの顔の向きの傾向に違いがあるか、実際に調べてみた。続きを読む

横書き漫画


 屋名池誠「横書き登場」(岩波文庫)には、「文学・マンガの現在と将来」という節がある。そこでは、横書きの小説や短歌、俳句が複数紹介されているのだが、節タイトルにもある漫画についてはたった2行割いているのみである。既存の横書き漫画については言及すらしない。あたかも存在しないかのような扱いだ。

 ツイッターでは、明治大学准教授の藤本由香里氏と編集家の竹熊健太郎氏が、海外展開のために横書きの漫画を作ることについて議論していた。だが、このまとめを見る限り、藤本氏は国産横書き漫画に言及していない。辛うじて竹熊氏は別の所で既存の横書き漫画に言及しているが、その他の発言を見るに、現状では横書き漫画は例外的な存在ととらえているようだ。
 また、トゥギャッターのコメント欄を見ると、「横書き漫画は描きにくいだけでなく、読みにくいので、日本では商売にならない。」などという意見が目立つ。

 このように、横書き漫画は取るに足らない存在という前提で論じられることが多い。だが、その前提は正しくない。決して主流ではないが、横書き漫画はすでに無視できない地位を確立しているのである。続きを読む

日本語話者のアイヌ語発音

 「CDエクスプレスアイヌ語」や「ニューエクスプレスアイヌ語」などの附属CDを聞くと、CDに吹きこまれている音声は必ずしも解説通りのものではないことに気づく。もちろん、理論と現実の齟齬というのはアイヌ語に限った話ではない。だが、アイヌ語でこの齟齬が生じることには、ある特徴的な理由がある。

 それは、吹きこみ者が日本語話者であるということだ。

 アイヌ語の母語話者は最早ほとんどいない。エスノローグでは、2007年の資料に基づきアイヌ語の話者数を10人としているのだが、そのうち何人が母語話者なのかは書いていない。
 学習書の附属CDの吹きこみ者の場合、「ニューエクスプレスアイヌ語」の関根一家はもちろん、「CDエクスプレスアイヌ語」や「カムイユカラでアイヌ語を学ぶ」の中本ムツ子(1928-2011)であってさえ、その母語は日本語であった。そのため、そのアイヌ語の発音には日本語の影響が窺えた。

 以下、日本語話者のアイヌ語発音の特徴について述べる。

  • "u"が非円唇母音になる。
 本来、アイヌ語の"u"は円唇母音である。
  • 母音の無声化・脱落が目立つ。
 例えば、ku=kiの"u"やci=kiの1つ目の"i"などは、しばしば無声化する。
  • 語尾の"n"が日本語の「ン」の音になる。
 本来のアイヌ語では、語頭・語中・語尾問わず、"n"は[n]と発音される。

 いずれも、日本語の影響が現れている好例だ。一方、樺太アイヌ語の母語話者であった藤山ハル(1900-1974)の発音は、"u"が円唇母音、母音の無声化が目立たないなど、まさにお手本になるものであった*

 とはいえ、現在のアイヌ語話者・学習者のほとんどが日本語話者なのだ。こうやっていちいちあげつらうのも、実際愚かしい。


* 「樺太アイヌ語例文集(1)」 村崎恭子 北海道大学アイヌ・先住民研究センター

「アコロ イタク」式表記とヘボン式表記

 1月6日の記事にも書いたように、「アイヌ神謡集」で使われたローマ字はヘボン式ベースのものだった。知里幸恵だけでなく、金田一京助や久保寺逸彦がアイヌ語の表記に用いたのもヘボン式ベースのローマ字だった[1]。ジョン=バチラーの「アイヌ・英・和辞典」でも、ヘボン式ベースのローマ字が用いられている[2]
 一方、現在主流となっているのは、片仮名とローマ字を併記する表記法だ。そして、ローマ字部分では、ヘボン式とは異なる綴り方が採用されている。

 さて、昔から使われていたヘボン式と現在主流の「アコロ イタク」式、2つの方式の差異とは、一体どのようなものなのだろうか。

 最大の違いは、ヘボン式でch, shと2文字で綴っていた音が、「アコロ イタク」式ではc, sと1文字で綴られるようになったという点だ。
 また、古いヘボン式ベースの綴り方では、/aj/や/aw/を二重母音と見なして"ai", "au"のように綴っていた。だが、「アコロ イタク」式ではそれぞれ"ay", "aw"のように綴る。このような音節はアイヌ語では閉音節扱いだから、「アコロ イタク」式の方が適切である。


[1] 「アイヌ語をフィールドワークする」 中川裕 大修館書店
[2] 「アイヌ・英・和辞典」 ジョン・バチラー 岩波書店
最新コメント
最新トラックバック
首都圏は関東より広い (みれいの近郊生活(ITI))
関東地方≠都会
  • ライブドアブログ